遺言書は手書きでなければ効力がありません。

私の両親の知人にあたるAさんは独身で、両親が遺した家でペットの猫と暮らしていました。

そんなAさんが私の母の前で、自分の遺産を猫に相続させるようなことを口にしたそうです。

 

猫に小判のことわざではありませんが、もし猫が現金や土地を相続しても、使えるはずがありません。

実際はAさんの死後、猫の世話をする人が財産の一部を相続することになるのではないかと母と話していました。

 

とはいえAさんはまだ自分の死後のことを考えるような年齢ではなかったので、

猫に遺産を譲るという話は思いつきだったのかもしれません。

しかし数年前に患った病気の再発が原因で、Aさんは入院して間もなく亡くなりました。

 

Aさんには姉のBさんと弟のCさんがいましたが、BさんがAさんより先に亡くなっていたために、

Cさんと、Bさんの子で、Aさんの姪にあたるDさんとEさんが代襲という形で遺産を相続することになりました。

 

Aさんの葬儀で喪主を務めたCさんは、できるだけ故人の意向にそって遺産の相続をしたいと考えていました。

正式な遺言書はなかったものの、Aさんはパソコンに日記のような書き込みを遺しており、

そこには、生前金銭トラブルのあったDさんには自分の遺産を譲りたくないと記してあったそうです。

 

これに反発し、法律通りの相続を主張したのがDさんです。

パソコンで入力された文章は、遺言書として法的に認められないから効果がないとDさんは主張したそうです。

遺言書は本人の自筆で書かれており、日付と署名、印鑑がなければ正式なものとは認められません。

 

Cさんは、AさんとDさんに起きたトラブルを知っていましたが、

遺言書に関するDさんの言い分は間違っていないので、

結局、Dさんの言うとおりに法律通りの割合で相続を行いました。

CさんもEさんも、Aさんの遺産を巡って裁判まで起こす気はなかったからです。

 

もしAさんが自筆の遺言書を遺していれば、Eさんに引き取られた猫が全財産を相続するのは難しくても、

Dさんの相続額は減っていたかもしれません。

Aさんから金銭以外にも支援を受けておきながら、借りたものを返さずに、

もらう遺産の権利を主張するDさんの姿勢を、私は第三者ながらあつかましいと感じますし、

生前のAさんはその件で私の母に愚痴をこぼしていたようです。

 

幸い、我が家に金銭トラブルは今のところありませんが、今後何が起きるかは分かりません。

Aさんの件を教訓に、私は両親に、遺言書を書くのが面倒でも、

せめてエンディングノートを用意しておいて欲しいと言ってあります。

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