「人が亡くなればお墓に入るのが当たり前」というのが、
少し前までの常識でした。
しかし最近では、家制度と結びついた従来のお墓には、
抵抗感をもつ人が少なくないようです。
特に、生前に家族と不仲だった人や、女性の場合、
「亡くなってまで夫やその家族と一緒にいたくない」といった理由から、
同じお墓に入ることを嫌がることがあります。
その背景には、宗教意識の薄れや核家族化、少子高齢化などに伴う、
家制度の崩壊といったことが考えられます。
特定の宗教を持たない人の場合、墓の管理の仕方や祀り方の作法といったことは
理解しづらく、どうしても墓を建てたいという気持ちが湧きにくくなるのもわかります。
墓地は自分ひとりでも購入することはできますが、
高価なこともあり、気軽に購入するには躊躇してしまいます。
それに、少子化の日本では、墓を今後継承していく人がいなくなるかもしれません。
そこで、自然に帰るロマンティックなイメージから、散骨を希望する人も増えています。
そもそも、人が亡くなっても、お墓を造らなければならない、という法律はありません。
遺骨を墓地以外に埋葬するのは法に触れますが、遺灰をまく散骨については、
「葬送のため節度を持って行なえば違法ではない」とされています。
散骨では、遺骨を全てまいてお墓を建てないケースもあれば、
大部分は墓に収め、遺骨の一部をまくケースもあります。
場所は、海、山、さらにはカプセルに遺灰を入れて、
宇宙に飛ばすという方法まであります。
どこに散骨して欲しいのか、生前に指定しておくといいでしょう。
散骨が認められるようになったのは、1990年代になってからです。
粉末状に砕いた散骨をまくことになるのですが、
他人の所有する土地への散骨はダメです。
自分が所有している土地または、海などに散骨場所は限定されます。
一人で強く生きてきた人ほど、自分らしく旅立ちたい、
他人には迷惑をかけたくない、という意識が強いようです。
心置きなく旅立つためにも、あらかじめ最後の形を決めておきましょう。