「ご臨終です」
相続はその瞬間から始まります。
その瞬間は、いつやってくるかは分かりません。
人が亡くなると、関係者への連絡・いろいろな手続き・儀式とやることが次々とあります。
四十九日の法要を済ませ、少し落ち着いたころに「そろそろ相続を」と考える方が多いようですが、
相続は手間と時間とエネルギーを費やす大仕事です。
相続人が配偶者のみなど一人だけでしたら何も問題はありませんが、
そういうケースは稀でしょう。
法定相続人は民法に規定されています。配偶者は常に相続人となります。
そして配偶者プラス子ども。
子どもがいない場合は、父母。
子どもも父母もいない場合は、兄弟姉妹が相続人となります。
相続人を確定するために、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて調べます。
その結果、思いもよらない人が相続人となる場合もあります。
例えば、兄弟姉妹がすでに亡くなっていると、その子ども(甥・姪)が相続人となります。
普段からあまりお付き合いの無い関係ですと、顔も名前もよく分からない人に連絡を取らないといけません。
また、全然知らなかった腹違いの兄弟がいた!ということが発覚することも珍しいことではありません。
初対面でどのような考えがあるのか分からない人達と遺産分けの話をするのは、
とても気の重い作業になります。
亡くなった方と生前何も関わり合いが無かった相続人でも、
思いがけない大金が転がり込んでくるチャンス!と思って、
きっちりと自分の権利を主張してくるかもしれません。
そのような場面に「遺言書」があれば、話し合いはスムーズに進みます。
遺言書に「妻に全ての財産を相続させる」
この一文があれば、兄弟姉妹が相続人の場合、兄弟姉妹には財産が行きません。
相続人には「遺留分」と言って最低限確保できる権利があります。
遺言書に相続分を指定されなかった相続人は、この遺留分を主張することができます。
しかし、兄弟姉妹には遺留分の権利は認められていません。
遺言書の内容に不満があっても、兄弟姉妹は遺留分の権利を主張することはできません。
相続人が配偶者と子ども、または父母の場合は、
子どもと父母には遺留分が有り、自分の法定相続分の半分までを主張できます。
「妻に全ての財産を相続させる」の一文があっても、
遺留分を主張された場合には、子どもや父母に遺留分を渡さないといけません。
その結果、住み慣れた家を処分して財産を分けるということになるかもしれません。
ここで威力を発揮するのが「付言事項」です。
遺言書には遺言者の想いを伝えるメッセージを書くことができます。
付言事項には法的効力はありませんが、
子ども達には生まれた時の感動・小さい頃の思い出・
そして立派に成長し何も心配することは無い、
自分の権利は主張せずにお母さんを頼む、
そのようなメッセージがあれば、お父さんの意思を尊重してスムーズな遺産分割ができると思います。